ジャズバイオリン奏者 寺井尚子(3) ケニー・バロンからもらった譜面

日経夕刊2013年2月14日から
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130214&ng=DGKDZO51698290U3A210C1BE0P00
(有料版は最初だけ読める記事もあるが、これは一部分も読めないらしい)

3曲の録音を終え、一息ついていたら、ケニーさんが「キーもテンポも決めないでもう1曲やらないか?」と誘ってくれた。「ロゼ・ノワール(黒いバラ)」という曲名が付けられた8分間のバラード。何もない自由なところから、形を描く。まさに私がエバンスからイメージしたジャズそのものだった。録音を終え、ホテルに向かうタクシーの車中、私はマンハッタンの夜景を眺めながらガッツポーズをとっていた。


私はこのCDがあまり好きでない。特に「ロゼ・ノワール」は思いっきり音程を外した部分をそのまま使っており、CDとして繰り返して聞くと耳に障る、というか音程がおかしい場所で身構えてしまう。久しぶりに再生したが、またCD棚で長い眠りに入るだろう。
一発勝負のジャズの録音らしいといえばらしいが。今の時代なら、デジタルで修正するだろう。修正の是非はあるが、何度も聴くことを前提にしているCDの修正は私は少なくとも否定しない。ジャズのライブは相当行くが、CDでライブを体験しようとは思わない。


ジャズ奏者としての評価はいろいろあるものの(というかジャズとは何ぞやとか言うマニアが強烈にけなすタイプ)私は大好きで、最近までCDは全部買っていた。最初のリーダーアルバムを超える作品はないが。

若い時分に聴いたせいもあるが、勢いがあって気持ちのいい、唯一無二の演奏。それなりのステレオを持ってる人には騙されたと思って聴いてほしいが、所属レコード会社を移ってから昔のCDがだんだん入手し難くなっているのが残念。