風立ちぬ

私にとって宮崎作品のベストの1つだし、今年観た映画でもNo1クラス。しかし、なんだかよく分からなかったという人が多いのもよく分かる。評価が分かれる理由は二人の専門家の映画評論で述べ尽くされている

宇多丸 2013年8月17日放送
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町山智浩 2013年8月20日放送
http://matome.naver.jp/odai/2137713216734546901
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史実をベースとしている話は、背景を観客に説明せずにいきなり語りだせる。
SFはタイムマシンが使えるとかこの映画の中だけの理屈、リアリティラインを説明する必要があり、飛躍した設定がない現実的な話でも、背景が茫洋としているゆえに人間関係や登場人物の思考や前提について最初に観客に提示しなければならない。説明する時間も必要だし、その部分を上手く処理しないと感情移入が難しくなってしまう。

史実物は説明を省くので、ある人には説明不足となり感情移入もできず訳分からなくなるが、知識があれば余分なプロセスをカットして最初から物語の世界に没入できる。

ファンタジーは全ての観客が何も知らないので作品の中で説明があり、好き嫌いは別として同じように作品世界に入っていくことになる。

関東大震災第二次世界大戦の歴史と当事の日本を取り巻く環境や日本人の意識、非勢だった日本の中で零戦が優れた戦闘機であったことは必須の前提知識だが、軽井沢で登場する外人がゾルゲみたいだな、と思えるぐらいは必要かもしれない。

この映画ではもう一つハードルがある
町山評にあるように、風立ちぬ宮崎駿の妄想を映像化したもので、男の子が手間隙をかけている「ごっこ遊び」だ。
前提知識があっても男の子的感覚がなければ、のれないだろう。。

これまでは「天空の城ラピュタ」がベストだった。風立ちぬはそれを超える感動があったが、イチから説明が必要なラピュタと舞台を史実から拝借している風立ちぬを同列に評価はできないし、比べるべきものではないかもしれない。

堀越二郎は妄想ばかりしていて、めぞん一刻を思い出した。日本のアニメが底流にもっているパターンなのだろう。