物価と株価

今日の黒田総裁の記者会見は凄かった。インフレ目標2%のためにマネタリーベース2倍、国債保有を2倍を2年で実行と、4つの2を大きく書いたフリップはまるでリフレ派の学者のようだ。
あくまでも目標は物価の安定としているが、発言にハイパーインフレを危惧するような雰囲気は微塵も無かった。
理屈や小難しい議論でなく、民衆を動かすには話し言葉だと改めて思った。

発言に将来の責任回避のためのアリバイ発言も無く、小泉純一郎を彷彿とさせる。こういう気持ちの良さは危険でもあり、金融緩和は短期的には誰も損をしない。戦時中の財政拡大もこんな感じだったのだろうか。

さて、流動性の罠に陥っても金融緩和が物価上昇につながるかは橘玲の言うようにもはや神学論争だが(私は繋がらないと思ってる。リフレ派には賛同できない)、知識人のマスコミの議論では物価と株価を混同しているのが混乱の元になっている。

罵り合いの議論では「理論はともかく、実際に株価が上がったじゃないか」となることが多いが、株や不動産などの資産の価格と物価とは違う。資産家の消費行動は変わるが、労働者にとってはあまり変わらない。昔と違って新興国の供給力が半端なくなり、物流も格段に進歩しいくら需要が増えても供給がいくらでも続くので、高級品マーケットは盛り上がるだろうが生活必需品やそれに近いものはなかなか変わらない。

大部分の労働者は株を持っていないか、あってもせいぜい数百万どまりだろう。マスコミに出る知識人は株を持っていることが少なくとも労働者よりは多いし、持ってなくても潤った企業や資産家から仕事をもらう機会が増えるので資産バブルの恩恵を受ける。資産バブルが自分の経済状態に直結するので、経済学に疎い知識人は誤解しやすいのかもしれない。収入は増えたし、銀座に行ったら高級品の価格が上がっているなあと。

先日の朝まで生テレビで、物価はわかりにくいから株価で説明してくれと言われたと政治家に言われたと高橋洋一が発言していたのが印象深かった。歴代内閣の経済金融政策を株価チャートに重ねて評価しているマスコミにも責任がある。というか特権階級のマスコミも資産バブルの影響を受けるので、彼らにもバイアスがかかっている。

もちろん、資産価格が上がらないよりは上がった方が雇用は維持されるし物価にもプラスだ(少なくともマイナスにはならない)。
じゃあどうしたら物価は上がるか。規制緩和をして競争力つけ、労働者の付加価値を上げるしかない、という池田信夫と同じ意見になる。
資産バブルはゾンビ企業の延命につながり、改革がとまる。根本的な、長期的な問題解決には繋がらない。

日銀総裁が嫌われ役にならない、皆から拍手喝采を受けるのは初めて見た。検事が無罪を主張している刑事裁判のようで、不思議な感覚がある。10年後はどうなっているのだろうか。

http://ameblo.jp/monex-oki/entry-11504746843.html