医療の値段

処方薬の抗アレルギーの目薬5mlを1本で領収書(自己負担)は450円。
一本1500円とはずいぶん高いなと、家に帰って薬価を調べたら25.4円/ml、1本100円ちょっとだ。
明細をチェック。過去の明細も出して比較し、ネットでも調べて大体の仕組みが分かった。

今回の請求は、149点。
 調剤基本料 89点 (基準調剤加算2、後発医薬品調剤体制加算3を含む)
 薬剤服用歴管理指導料 41点
 外洋薬調剤料 10点
 薬剤料 9点
90円の目薬を貰うのに、1490円の医療費が調剤薬局でかかっている。

処方箋を貰うまでに最低かかるのが
 再診料 69点
 明細発行体制等加算 1点
 外来管理加算(後述)52点
 処方箋料 68点
合計190点1900円。
90円の目薬に3390円かかることになる。うーむ。

結論から先に言う。医者薬局ぼろ儲け、けしからんではない。国民皆保険点数制度はなかかな難しいなと思うのであある。

私は医者に行くことにそれほど抵抗を感じない。3割負担で効果的な処方薬をもらえるのであれば、費用対効果の面で積極的に利用する。待ち時間はあるが、読書好きで常に本を読んでいるのでそれほど時間コストはかからない。

まず、調剤薬局の門をくぐると自動的にかかるのが調剤基本料と薬剤服用歴管理指導料で 130点。薬の種類や量の多さにかかわらずかかる。診療所の190点とあわせ、1分診療で3200円を落としている。自己負担の1000円弱はどうでもよく、私のような健康な人間が処方薬をもらうだけで、自動的に2240円が健康保険から医療機関に払われてるとすると、高齢化社会がさらに進むと国民皆保険は維持できないな、といつも思う。花粉症の処方薬をもらい、歯医者にちょっと行った1年間の医療費約15万円。自己負担が5万円弱、健康な勤労者に国民皆保険から10万円強を給付されている。

まず診療所から考える。一人2分1900円で1時間の売上が57,000円、1日7時間で399,000円、週5日間で200万円、年末年始祝日をひいて、年50週換算で1億円。え?
この違和感、私は、多いのでなくえらい少ないなと思った。
倍にして、一人1分で年2億円。最低でもこのくらいの上限試算が必要だ。ここからスタッフの給料と家賃を払い、最低限のシステム投資と医療器具の更新を行う。もちろん勤め人の給与を遥かに超えるが、借金から入り経営リスクをとらなければならない。

私のような、定型的な処置と処方をすればいいだけの患者は、医者・薬剤師から見れば「おいしい」客だ。
一方、神経と時間を使わなければならない、医療的に問題のある患者からも同じ点数しか取れないので、こちらはコスト割れになる。
点数制度の皆保険では、健康な人から過剰な医療費を取り、不健康な人への診療のコストを補うことになる。

理想的なことを言えば、皆保険下で私のような健康な人への点数を下げ、難病とまでいかなくても普通に難しい患者への点数を上げることだろう。ただ、点数制度を複雑にすると事務作業が増えるし、判定も難しくなる。
健康な人と不健康な人が同じ割合で全ての診療機関・薬局にかかれば整合性はとれるが、そうはいかない。点数制度の下では「健康な患者」をいかに多く獲得するかというインセンティブが働いてしまう

前述の2億円はすべて健康な患者が客の場合であって、実際には時間のかかる患者もクレーマーも来る。そこから家賃を払い、スタッフの給料を払い、医療器具のコストを払い、繁閑を吸収するのは、先進国の医療ビジネスととしては「おいしい」と言い切れない。

部外者で正確な評価ができないが、診療所・病院より調剤薬局のほうが問題をかかえていると思う。
http://blog.m3.com/yonoseiginotame/20120124/1

薬局が適正な利益を得るのにやぶさかではないが、「薬剤服用歴管理指導料」はどうだろうか(リンク先の30点は現在は41点)
http://agora-web.jp/archives/1223684.html
薬歴管理が有効に働くためには以下の条件が必要だ
 1.患者が一つの薬局しか使わない(かかりつけ薬局を持つ)
 2.薬局が医師に意見を言える。
どちらも今の日本では実現していない。

「外来管理加算」に矛盾があるのは今回調べて知った。
http://blogs.yahoo.co.jp/harenihiamenohi3/9506868.html
何もしなかったときより、ちょっとした処置があったほうが安くなることは自身の明細でも確認した。
通販で、送料500円、3,000円以上無料の場合は、商品代金2800円となった場合は余計なものを買って3000円にしたほうが総支払額が低くなるような仕組みだ。
処置をしないでも点数が発生するのは余計な診療を抑制するインセンティブが発生するので有用だ。ただ、小さい処置、耳鼻科の薬剤吸入など典型的だが、最低でも外来管理加算と同額の52点は取れないとおかしい。
純民間の商取引だったらそんなのすぐ対応するだろうが、点数制度医療保険では例外処理を増やすだけでも面倒になりそうだ。