ぐるりのこと。

 リリー・フランキーが繁華街にあるミスター・ミニットのような小さな靴修理店の店員として初めて登場するシーンは簡潔で印象的。
 女性物の靴を直しながら、できあがりを待っている若くてケバい女性と向き合って世間話。

[1]女「なんでオヤジって飲むと喜ぶんだろう?」
[2]リ「いくら貰えるの?」
[3]女「(追加で)2000円」
・・・・
[4]リ「メシ食いにいかない?」
[5]女「わーうれしいー」

 確かこんなだった。[1]の段階では普通に会社の上司の話っぽいが、[2][3]で女性が風俗で働いていること、二人の会話はこのシーンの前から続いていて、リリー・フランキーが彼女の仕事を知っていることが観客にも提示される([1]で飲むのは酒じゃないことも)。
 そして[4]で、そんな女性を食事に誘うことでリリー・フランキーの人物設定が一瞬で提示される。
 下ネタにはみんなで笑えるものと引いてしまうのがあるが、これは明らかに後者。冒頭からかますことで、以後容赦ない下ネタが続くことも提示(実際にはこれ以上のはなかったが)。半分ぐらいはこの一連の会話が理解できないはずで、それでも削ぎ落としてしまった脚本にあと2時間への期待が膨らんだ。

 偽善と本音が濃密に、しかし違和感なく続く家族の会話。いかにもありそうな夫婦の会話、親しい知人間の会話。脚本がよくできていて2時間20分は長く感じない。